経済的な理由で大学・専門学校への進学が難しい場合、奨学金を借りるという選択肢があります。しかし、「奨学金をきちんと返せるかな?」「就職できなかったり病気になったりしたらどうしよう」など、奨学金を借りることに不安を感じている人も多いのではないでしょうか。
実は、奨学金の中には返済不要の「給付型奨学金」もあります。この記事では、給付型奨学金の概要、受給基準、奨学金の使い道についてご紹介します。
記事の概要
給付型奨学金とは?
給付型奨学金とは、返済する必要がない「もらえる奨学金」です。文部科学省が給付型奨学金制度を創設したのは2017年で、2018年から本格的にスタートしました。現在、国の給付型奨学金はJASSO(独立行政法人日本学生支援機構)が運営しています。
これまで、日本で奨学金といえば返済が必要な「貸与型奨学金」が一般的でした。一部の大学や財団が独自の給付型奨学金制度を設けていたものの、利用できる生徒は限られており、多くの学生が国の貸与型を選ぶしかない状況だったといえます。
しかし、2000年代に入ると奨学金返還の延滞が増え、2016年には奨学金制度の構造的問題が本格的に取り上げられるように。そして、2017年に給付型奨学金制度が創設され、2018年から本格的に運営が始まりました。最初は、経済的に厳しい状況の学生が主な対象でしたが、現在は対象者が拡大しています。
そして、2020年4月には「高等教育の修学支援新制度(大学無償化制度)」が新設されました。新制度の奨学金制度では「授業料・入学金の免除・減額」と「給付型奨学金の支給」という2つの支援がセットになっており、特定の条件を満たす学生が受けられます。
奨学金や学費減免の種類
進学費用の負担を軽くする方法は、大きく分けて「貸与型奨学金」「給付型奨学金」そして「学費の減免」の3つに分けられます。
- 貸与型奨学金(借りる奨学金)
- 給付型奨学金(もらえる奨学金)
- 学費の減免(学費を払わなくてもいい・安くなる制度)
貸与型奨学金
貸与型奨学金は、「借りる」奨学金であり、支給されたお金は将来的に返済しなければなりません。また、貸与型は第一種奨学金(無利子)と第二種奨学金(有利子)に分けられます。
採用基準は、「家計の収入条件」と「学力の条件」です。家計が経済的に厳しく、一定の学力がある生徒に奨学金制度の利用が認められています。条件は第二種よりも第一種のほうが厳しいですが、給付型奨学金と比較すると、貸与奨学金の採用人数は多い傾向にあります。
給付型奨学金
給付型奨学金は、「もらえる」奨学金です。国(JASSO)や地方自治体、大学・短大・専門学校、公益法人などの団体が給付型の奨学金制度を設けています。経済的理由で進学が難しい生徒の学業支援として提供されるため、基本的に返済をする必要はありません。
一方で、貸与型奨学金に比べると家計基準や学力基準が厳格で、採用される学生の数は限られています。また、JASSOの奨学金には学業成績や学修状況が悪いと支給を停止される「適格認定」という制度がありますが、この基準も貸与型より厳しめに設定されています。
学費の減免
学費の減免は、入学料や授業料などの学費の全部もしくは一部を「支払わなくてもいい」制度です。奨学金と異なり、実際にお金をもらうことはありません。また、国の給付型奨学金の対象になると、入学金・授業料も免除もしくは減額をしてもらえます。
採用条件は、奨学金と同じく家計基準と学力基準によりますが、家計基準や学校の種類(大学・短大・専門学校など)によって免除・減額の上限額は異なります。
また、取得資格やスポーツ・芸術での受賞歴といった経歴に応じた特待生制度を設けている学校もあり、学校が独自に設置している授業料免除制度を受けることも可能です。
給付型奨学金の支給金額はどれくらい?
奨学金は貸与型・給付型にかかわらず条件が細かく定められており、条件に応じて支給額が決定されます。支給額の金額に関する条件は、以下のようなものがあります。
- 世帯の収入
- 進学先の種類(大学、短期大学、高等専門学校、専門学校)
- 自宅から通うか、一人暮らしか
自身の学生生活と照らし合わせて、どれくらいの支援を受けられるのかを確認してみましょう。
支援額の例は、以下のとおりです。
給付型奨学金 | 上限 約91万円/年 |
授業料・入学金 | 上限 約75万円/年 |
合計 | 上限 約166万円 / 年 |
給付型奨学金 | 上限 約91万円/年 |
授業料・入学金 | 上限 約75万円/年 |
合計 | 上限 約121万円 / 年 |
※住民税非課税世帯に準ずる世帯の学生への支援は、上記の2/3又は1/3になります。
高等教育の修学支援制度や奨学金の給付額・上限額について、詳しくは仙台医健・スポーツ専門学校の「修学支援制度」ページでも詳しく解説していますので、こちらをご覧ください。
「給付型奨学金」+「授業料減免」のご案内|仙台医健・スポーツ専門学校
https://www.sendai-iken.ac.jp/admissions/payment_exempt.html
給付型奨学金は何に使える?
奨学金は、教育に関する使い道に限られますが、具体的にどんな費用に使ってよいかまでは決まっていません。遊びには使えませんが、教材を購入したり家賃や食費などの生活費にあてたりといった学業に必要な使い方は可能です。進学には学費以外にもこまごまとした費用がかかるので、不足分がある場合は奨学金を申請するのがいいでしょう。
給付型奨学金の使い道の例としては、以下のようなものがあります。
- 学費
- 教材費
- 家賃・生活費
- クラブ・サークル活動費
学費
奨学金のもっともスタンダードな使い方は、入学金や授業料などの学費にあてることです。
しかし、入学金に関しては、支払いまでに奨学金の振り込みが間に合わないことがあります。奨学金が振り込まれるのは入学後の4~6月からですが、入学金は入学する前に納入を求められるからです。入学金に関しては教育ローンを借りて対応し、ローンの返済で奨学金を活用するという方法もあります。
教材費
学科によっては、授業で使う教材が高額になることもあります。教材には教科書やPCだけでなく、学科によっては画材、楽器、白衣やトレーニングウェアなどが必要です。このように購入や維持に費用がかかる教材費用には奨学金をあてられます。また、国内外への研修プログラムがある場合は、交通費や渡航費などを奨学金で補填することも可能です。
家賃・生活費
学業に専念するつもりでも、生活を維持するためにはお金が必要です。例えば、一人暮らしのアパートや学生寮には家賃がかかりますし、物件によっては敷金や礼金をまとめて用意しなければなりません。
また、日常生活では食費や水道・光熱費、通信費、被服費(洋服代)などがかかります。生活費を節約することも大切ですが、不足分には奨学金を使えるということも覚えておくといいでしょう。
クラブ・サークル活動費
奨学金は基本的に「進学費用」として支給されるものですが、クラブ・サークルの活動費用を補填することも可能です。学費や生活費よりも重要度は低いものの、クラブ・サークル活動を通してスキルを獲得したり就職に役立てたりできるでしょう。ただし、奨学金の中には用途を証明しなければならないタイプのものがあり、すべての活動には使えない可能性があります。どの範囲まで奨学金が活用できるかについては、各学校の奨学金課や奨学金相談センターに相談してみましょう。
給付型奨学金の採用基準
給付型奨学金にもさまざまな種類があり、団体によって採用基準が異なります。ここでは、国の給付型奨学金を運営している日本学生支援機構(JASSO)の給付型奨学金を進学前(予約採用)に申請するケースをもとに、奨学金の採用基準を解説します。
まず、給付奨学金は「学ぶ意欲がある学生であること」「世帯収入や資産の要件を満たしていること」の2つの要件を満たす学生全員が対象です。
従って、採用条件の基準は、「学力基準」「世帯の収入」「世帯の資産」の3つに分けられます。
学力基準
「学ぶ意欲がある学生であること」は学業の成績によって判断されます。これを学力基準といい、以下のいずれかを満たしている必要があります。
1. 高等学校の成績が5段階評価で平均3.5以上であること。専修学校の高等課程も同様の基準。
2. 進学先の大学で学び、将来社会で活躍する意欲を持っていること。意欲の確認は、学校の面談やレポート提出で確認する。
参考:進学前(予約採用)の給付奨学金の学力基準 | JASSO
収入基準
収入基準は、生計維持者(学費や生活費などを負担する人)の収入によって判断されます。
収入・所得の上限額よりも生計維持者の収入が低ければ奨学金が認められ、かつ収入額に応じて受給できる金額が変わります。収入・所得の上限額は、兄弟の数、年齢、税額控除によっても異なります。
支援区分 | 収入基準 |
第1区分 | あなたと生計維持者の市町村民税所得割が非課税 (支給額算定基準額の合計が100円未満) ただし、ふるさと納税や住宅ローン控除などの税額控除を受けている場合は対象外になる可能性があります。 |
第2区分 | あなたと生計維持者の支給額算定基準額の合計が100円以上25,600円未満 |
第3区分 | あなたと生計維持者の支給額算定基準額の合計が25,600円以上51,300円未満 |
参考:進学前(予約採用)の給付奨学金の家計基準 | JASSO
収入基準は、世帯人数、障がい者の有無、保険料の支払い状況などによっても異なります。JASSOが提供している「進学資金シミュレーター」で、収入基準に該当するかどうかの目安が分かるので、確認してみましょう。
資産基準
資産基準は、申込者と生計維持者の資産額を合算した金額によって判断されます。
具体的には、申込日時点の申込者と生計維持者(基本は父母2人)の資産額の合計が2,000万円未満(生計維持者が1人のときは1,250万円未満)であることが条件です。
参考:進学前(予約採用)の給付奨学金の家計基準 | JASSO
資産基準に該当する「資産」とは、現金(投資信託や投資用の金・銀を含む)、預貯金、有価証券などの合計額のこと。土地・建物などの不動産や貯蓄型の生命保険・学資保険は含まれません。ただし、生命保険・学資保険でも、満期や解約で現金化した場合には資産とみなされます。また、資産は住宅ローンやその他の借金などの負債と相殺して減らすことはできない点に注意しましょう。
給付型奨学金「予約採用」へ申し込む流れ
日本学生支援機構(JASSO)の給付型奨学金は、進学する前年の4月下旬から学校を通して「予約採用」を申し込むことができます。前提として、予約採用の申請は「インターネット(スカラネット)の申込手続き」「書類提出(JASSO)」「書類提出(学校)」の3つの段階に分けられており、それぞれ定められた期限までに申請が必要です。
予約採用へ申し込む流れは以下のとおりです。
1.高等学校等から申込関係書類を受け取る
まずは、学校から申込関係書類を受け取ります。その際、学校からID・パスワードが配布されます。加えて、マイナンバー提出書にも申込ID・初期パスワードが記載されています。この2組のID・パスワードを確認しましょう。
- 学校から配布される識別番号:ユーザID、パスワード
- マイナンバー提出書に記載:申込ID、初期パスワード(後ほど自分で設定したパスワードに変更します)
スカラネットで申込内容や選考結果を確認するためには、「申込ID」と「変更後パスワード」が必要です。特にマイナンバー提出書はJASSOに提出するので、両方のIDとパスワードは必ず控えておきましょう。
2.申込手続き
インターネットからスカラネットにアクセスし、申込情報を入力します。
高等学校には申請書類を提出し、JASSOにはマイナンバー提出書類を提出します。
提出方法 | 書類 | 提出が必要な人 |
JASSOへ提出 | マイナンバー提出書 | 全員 |
番号確認書類 | ||
身元確認書類 | ||
学校へ提出 | 出書類一覧表【様式①】 | 全員 |
給付奨学金確認書【様式②】 | 給付型奨学金の希望者 | |
貸与奨学金確認書兼個人信用情報の取扱いに関する同意書【様式③】 | 貸与型奨学金の希望者 | |
在留資格の証明書類 | 申込者本人の国籍が日本以外 | |
施設等の在籍証明書等 | 社会的養護を必要とする人 | |
マイナンバー代用書類提出台紙【様式④】、マイナンバー代用書類 | マイナンバーや番号確認書類を提出できない人 | |
年収等の実績計算書【様式⑤】、収入証明書等 | 1月1日時点で海外居住していた申込者・生計維持者がいる人 | |
海外居住者のための収入等申告書 |
3.「採用候補者決定通知」の交付
奨学金を申し込んだ学校から「採用候補者決定通知」が交付され、選考結果が知らされます。採用が決定されたかどうかは、スカラネットからも確認できます。「採用候補者決定通知」は進学先の手続きで使うので、なくさないようにしっかりと保管しておきましょう。「採用候補者決定通知」の再発行はできません。万が一なくしてしまった場合、スカラネットから簡易版の通知を印刷することは可能です。
4.「進学届」の提出
進学後、進学先の学校に「採用候補者決定通知【進学先提出用】」を提出します。
進学先の学校から、「進学届入力下書き用紙」と「識別番号(ユーザIDとパスワード)」を受け取り、進学先の学校が指定する期間までに、スカラネットから進学届を提出してください。
5.奨学生として採用・通知
採用決定後は、奨学生証が進学先の学校を通じて交付されます。
6.奨学金の振込開始
奨学生に採用された月から在学している学校を卒業するまで毎月1回、本人口座に振り込まれます。
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